「太陽と乙女」【読書感想】

 今日読んだのは森見登美彦氏の「太陽と乙女」

太陽と乙女

太陽と乙女

 

コラムやエッセイ、あとがき、寄稿文などを編纂した一冊。

終盤には学生時代の日記もあり、クスリと笑える。

この本を読んで次の3点が特に面白かった。

1つ目は氏のスランプと苦悩について

 仕事を抱え込みすぎてスランプを抱え、奈良に戻っていた。その際に手直しし続けていた新聞連載が「聖なる怠け者の冒険」であった。などということは夢想だにしていなかったので大層驚いた。

 

聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)

聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)

 

 「スランプとはこれまで無意識にできていたことが、無意識にできなくなることである」と本文中にあるように、これまで無意識にできていた小説の書き方がわからなくなった様子である。職業作家のスランプというのは、想像するだけで恐ろしい。この無意識をトラに例えて、自分と向き合い続ける一説がありそれがとても面白かった。

私がどれだけ探しても会うことができず、途方に暮れるのだが、ある時ひょっこり出てきて小説のテーマを聞いてくるトラ。自分の内なるトラが小説を書かせてくれている、という例えもなんだか素敵でとても好き。

2つ目は氏の世界の見え方について

この本を読む中で何度も「異世界への入り口」とか「遠いところより近いところ」という話が出てくる。これが氏の世界の見え方なんだと思うと自分も少し小説家に近づけた気がしてうれしくなってしまった。少し裏の小道や、商店街、何気ない坂道が異世界への入り口であり、それは別に普段目にしてるけどなかなか通らないあそこのことなんだろう。

3つ目は氏の小説についての考え方

自分の事前の想像をどれだけ越えられるか、が小説を作るうえで重要なポイントらしい。それこそトラが何とかしてくれなければならないと氏は語る。二度と同じものは作れないと思えることが完成の条件らしい。自分でそんな経験をしたことがないので、なにかアウトプットをするときに一つの基準として使ってみたい。

 

ここまで書いてみて、自分が「作家森見登美彦の思考の一端を垣間見ることができてうれしさでいっぱいのミーハーなファン」だということがよくわかる。